介護DXで使える補助金まとめ|現場の負担軽減に役立つ5つの制度

補助金・助成金

介護業界では、業務効率化やスタッフの負担軽減を目指してDX(デジタル変革)やICT化を進めたいという声が日増しに高まっています。記録業務のペーパーレス化や見守りセンサーの導入など、デジタル技術を活用した現場改革への関心は確実に広がっているようです。

ただ、こうしたデジタル化への第一歩を踏み出そうとすると、どうしても気になってくるのが導入コスト。「予算が足りない」「投資額が想定以上」と悩む声は少なくありません。

実は、そんな悩みを解決してくれる心強い味方が存在します。それが国や自治体による各種補助金制度です。今回は、介護現場で特に活用しやすい5つの制度をピックアップしました。事業所の状況に合わせて、最適な支援制度を見つけていきましょう。

1. IT導入補助金 – デジタル化の強い味方

経済産業省が所管する「IT導入補助金」は、中小企業や小規模事業者向けの定番制度です。
ITツール(ソフトウェアやクラウドサービスなど)の導入経費を補助してくれる制度で、IT導入補助金2025では最大補助率が2/3に引き上げられる見込みです。

こんな場面で役立つ

  • 訪問介護の事業所で、紙の日報をタブレット入力に切り替えたいとき
  • デイサービスで介護記録ソフトや請求ソフトを新規導入したいとき
  • 施設内の情報共有をクラウドサービスで効率化したいとき

申請は「IT導入支援事業者」として登録されたベンダーや販売代理店を通じて行うのが一般的です。導入したいツールを相談しながら選定し、必要な申請書類を整えていきます。ただし、申請には公募期間が設定されているため、導入までのスケジュールを早めに検討しておくことをお勧めします。

2. 介護ロボット・ICT導入支援事業費補助金 – 現場特化型の支援制度

続いてご紹介するのは、介護現場のロボットやICT機器の導入に特化した補助金です。厚生労働省が中心となり、各都道府県を通じて受付・交付が行われています。

対象となる機器例

  • 見守りセンサー(夜間巡回の負担軽減)
  • 介護記録ソフトウェア(業務効率化)
  • コミュニケーションロボット(認知症予防やレクリエーション支援)
  • 移乗支援機器(介護者の身体的負担軽減)

この補助金を活用すれば、スタッフの身体的負担(移乗介助など)や精神的負担(長時間業務、記録の多重入力など)を軽減する機器を、比較的手頃な費用で導入できる可能性があります。

ただし、自治体ごとに補助対象や補助率が異なる場合もあるため、まずは地元の都道府県庁や介護保険課などの公式サイトで最新の情報を確認することが大切です。

3. 人材確保等支援助成金(テレワークコース)- 柔軟な働き方を支援

この助成金は、テレワーク環境の整備を支援する厚生労働省関連の制度です。「介護現場とテレワーク?」と違和感を覚える方もいるかもしれません。しかし、事務作業や会議のオンライン化により、一部のスタッフが在宅勤務できる仕組みを整えることは、実は有効な取り組みといえます。

人材不足が深刻な中、柔軟な働き方の選択肢を用意しておくことで、スタッフの定着率向上にもつながる可能性があります。

こんな場面で役立つ

  • 管理部門の業務(シフト管理、請求事務など)をオンライン化し、出社を最小限にしたい
  • 対面で実施していたミーティングを、オンライン会議システムに切り替えたい
  • 一部の事務作業を在宅でも行える環境を整備したい

ただし、テレワークの導入には就業規則の整備やセキュリティ確保など、事前に検討すべき事項が数多くあります。助成金の申請条件も細かく定められているため、公式の公募要領をしっかり確認したり、社会保険労務士に相談したりすることをお勧めします。

4. 小規模事業者持続化補助金 – 小規模事業者の味方

名前の通り、小規模事業者の「販路開拓」や「業務効率化」を支援する補助金です。経費の最大2/3が補助されるため、ITツール導入などの初期投資を抑えることができます。

ただし、注意が必要なのは「小規模事業者の定義」です。商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)の場合、従業員数5人以下が要件となっています。実際には、これより多くのスタッフを抱える介護事業所も少なくないため、適用対象になるかを慎重に確認する必要があります。

こんな場面で役立つ

  • 文字通り「スタッフ数が5人以下」の小規模事業所で、ITを活用した業務効率化を行いたいとき
  • 地域密着型の訪問介護や、小規模多機能型居宅介護事業所などで、広報活動やデジタルマーケティングを検討しているとき

もし従業員数の要件に該当しない場合は、前述のIT導入補助金など、他の制度の活用を検討しましょう。

5. ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)

一般的に「ものづくり補助金」は製造業向けのイメージが強いかもしれません。しかし、実は介護サービス事業者でも活用できるケースがあります。生産性向上や業務プロセスの抜本的な改革を目指すプロジェクトであれば、ICT化に関連する設備やシステムの導入に補助を受けられる可能性があるのです。

こんな場面で役立つ

  • デイケア施設でAIやロボットを活用し、リハビリやケアの高度化を図りたい
  • 最新技術を導入して、介護サービスの質的向上を目指したい

ただし「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等との重複がある事業を申請する事業者は補助対象となりません。」とあるので、自費サービスであれば、補助対象事業として認められる可能性があります。

補助金選びのポイントと注意点

1. 事業所の状況や導入目的を明確にする

まずは自施設が本当に必要としているものは何か、具体的なゴールを明確にしましょう。「紙の記録をクラウド化したい」「夜間巡回をセンサーで効率化したい」「テレワークで事務担当者の負担を減らしたい」など、具体的なニーズをはっきりさせておくと、最適な補助金を選びやすくなります。

2. 申請要件や公募期間を入念にチェック

多くの補助金は年に数回の公募があり、締切を逃すと次回まで待たなければならないケースがあります。また、従業員数や売上規模、導入内容などによる制限も設けられているため、自社が確実に対象となるかどうかの確認は必須です。

3. 導入後の運用を見据えた計画づくり

ソフトウェアやクラウドサービスを導入しても、現場のスタッフが使いこなせなければ意味がありません。導入時の研修時間確保や、マニュアル整備、継続的なサポート体制など、運用面でのコストや工数も含めて検討し、計画書に反映させることをお勧めします。

4. 専門家や支援機関を積極活用する

補助金の申請書作成や必要書類の準備は、慣れていないとかなりの負担になります。商工会議所や社会保険労務士、行政書士、IT導入支援事業者などの専門家に相談することで、スムーズな申請手続きが可能になります。

まとめ – 補助金を味方につけて、介護DXを推進しよう

介護現場のDX化やICT化は、もはや「やりたい」ではなく「やるべき」課題となっています。スタッフの業務負担を軽減し、利用者により質の高いケアを提供するためには、避けては通れない道といえるでしょう。

確かに導入コストは大きな課題ですが、国や自治体の補助金・助成金を上手に活用することで、その負担を大きく軽減できる可能性があります。

  • IT導入補助金は幅広いITツール導入をサポートする定番制度
  • 介護ロボット・ICT導入支援事業費補助金は、現場のニーズに直結した支援を提供
  • *人材確保等支援助成金(テレワークコース)**は、柔軟な働き方の実現を後押し
  • 小規模事業者持続化補助金は、要件に該当すれば効率化やPR活動を支援
  • ものづくり補助金は、大規模な設備投資や高度なICT化に活用可能

ただし、これらの制度は年度ごとに公募時期や要件が変更される可能性もあります。常に最新情報をチェックし、計画的な準備を心がけましょう。

「どの補助金が使えるのか分からない」「要件に合うか不安」という場合は、早めに専門家への相談を検討してください。適切なアドバイスを得ることで、より確実な導入計画を立てることができます。

介護の仕事の本質は、何よりも「人と人とのかかわり」にあります。ICT化による業務効率化は、そうした大切な時間を確保するための手段といえます。補助金制度をうまく活用しながら、スタッフが生き生きと働ける環境づくりを目指してみてはいかがでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました